内閣支持率や政党支持率は、選挙報道で最も引用される数字である。しかし同じ時期の調査でも、報道機関によって結果は一致しない。差はどこで生まれるのか。
1. 調査方法
現在の主流はRDD(Random Digit Dialing)、無作為に発生させた電話番号にかける方式である。固定電話のみか、携帯電話を含むかで対象者の構成が変わる。近年はインターネット調査を併用する社もあり、方式が違えば単純比較はできない。
- 固定電話中心: 高齢層の比率が高くなりやすい
- 携帯併用: 若年層を拾いやすいが、居住地の特定が難しい
- インターネット: 回答者がパネル登録者に偏る
2. 質問文と選択肢
「支持する/支持しない」の2択で聞くか、「どちらとも言えない」を選択肢に置くかで、支持率は変わる。選択肢に中間項があると、支持・不支持の双方が下がる。
さらに、「支持しない」と答えた人に理由を追加で聞く社と聞かない社があり、質問の並び順(前の質問が次の回答に影響する)も差を生む。
3. 回答率
架電数に対して実際に回答が得られた比率が回答率である。近年は低下が続いており、40%を下回る調査も珍しくない。回答率が下がると、回答した人と回答しなかった人の性質の違い(無回答バイアス)が結果に影響しやすくなる。
4. 誤差の幅
標本調査には統計的な誤差がつきものである。有効回答1,000件程度の調査であれば、支持率50%前後の項目でおおむね±3ポイントの誤差が見込まれる。
つまり、前月48%・今月51%という変化は、誤差の範囲内で説明できてしまう。1回の増減で傾向を語るのではなく、複数回・複数社の推移を並べて見るのが正しい読み方になる。
読むときのチェックリスト
- 調査日はいつか(大きな出来事の前か後か)
- 調査方法は何か(RDD/インターネット、固定/携帯)
- 有効回答数はいくつか
- 前回調査からの変化は誤差を超えているか
- 質問文が公開されているか
多くの報道機関は調査概要を記事末に掲載している。そこを読まずに数字だけを引用しない。
選挙予測との関係
世論調査は「今の意識」の測定であり、選挙結果の予測ではない。政党支持率と実際の得票率は、投票率や候補者の構成によって大きくずれる。
選挙インサイトでは、事実データ(選挙結果)と予測を別のデータとして扱い、画面上でも明確に区別する方針を採っている。予測は必ず算出時点と根拠を伴わせ、後から精度を検証できる形で履歴に残す。
出典
- 総務省統計局「標本調査の考え方」 https://www.stat.go.jp/
- 各報道機関が記事末尾に掲載する調査概要