投票率は選挙報道で最もよく使われる数字である。だが、比較の仕方を誤ると意味を取り違える。3つの論点を押さえたい。

1. 分母は「当日有権者数」

投票率は次の式で計算される。

投票率 = 投票者数 ÷ 当日有権者数 × 100

分母は投票日当日の有権者数である。転入・転出や新たに18歳になった人によって、分母は選挙のたびに変わる。人口が減っている自治体では、分母が縮んで投票率が上がって見えることがある。

投票率だけを追うのではなく、実数(投票者数そのもの)も併せて見ると、地域の変化を取り違えにくい。

2. 期日前投票の比率

期日前投票の利用は増え続けている。国政選挙では投票者の3割を超える回もある。ここで注意したいのは、期日前投票の増加が必ずしも投票率の上昇を意味しないことである。

「投票日に行く予定だった人が期日前に前倒ししただけ」であれば、最終的な投票率は変わらない。期日前投票が過去最高でも最終投票率が前回を下回る、という現象はこの理由で起きる。

期日前の数字が発表されたら、次の2点を確認したい。

  • 前回同時点との比較か、最終値との比較か
  • 期日前投票所の数が増えていないか(利便性の変化)

3. 年代別投票率

総務省は選挙のたびに、抽出調査による年代別投票率を公表している。全体の投票率が同じでも、年代構成が変われば選挙結果は変わる。

一般に、年齢が上がるほど投票率は高い。したがって人口構成と投票率の掛け算で、実際に投票所へ行く有権者の年齢分布は、人口分布よりさらに高齢に偏る。「若者の投票率が上がると結果が変わる」という主張の根拠はここにある。

比較の落とし穴

よくある比較注意点
前回選挙との比較同時に行われた選挙(同日選)の有無で大きく変わる
他自治体との比較選挙の種類が違えば比べられない(首長選と議会選)
全国平均との比較都市部と町村部では構造的な差がある
時系列の比較選挙権年齢の変更(2016年)の前後で分母の定義が変わる

選挙インサイトでの扱い

選挙インサイトは、投票率を選挙ごとに当日有権者数・投票者数・投票率・前回投票率の組で記録している。率だけを持つと、後から分母を確認できなくなるためである。

開票中の速報値と確定値も区別して保持し、画面上でも「速報値」と明示する。速報を確定情報のように見せないことは、選挙データを扱ううえでの最低条件だと考えている。

出典

  • 総務省「国政選挙の投票率の推移」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/
  • 総務省「年代別投票率」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/