現在の衆議院の選挙制度は1994年に成立し、1996年の総選挙から適用された。それ以前の制度は中選挙区制である。
中選挙区制とは
1つの選挙区から3〜5人程度を選ぶ制度で、有権者は候補者名を1人だけ書いた。定数が複数あるため、同じ政党から複数の候補者が立候補し、同士討ちが常態化した。
政党単位では票が分かれないため、候補者は政策よりも個人後援会と地域サービスで差をつけることになる。これが以下の帰結を生んだと指摘されてきた。
- 派閥政治の温床(候補者を支えるのは党ではなく派閥)
- 政治資金の必要額が大きくなる
- 政党を選ぶ選挙になりにくい
1994年の政治改革
リクルート事件や佐川急便事件を背景に「政治とカネ」の問題が高まり、1993年の総選挙で自民党が過半数を割った。細川護熙内閣のもとで成立したのが政治改革関連4法である。
- 公職選挙法改正(小選挙区比例代表並立制の導入)
- 衆議院議員選挙区画定審議会設置法
- 政治資金規正法改正(企業・団体献金の制限強化)
- 政党助成法(政党交付金の創設)
制度改革は「選挙制度」と「政治資金」がセットだった点が重要である。候補者個人が集める資金を減らし、政党を通じた配分に切り替えるという設計思想があった。
何が変わったか
- 政党名で投票する比例代表が導入され、政党本位の選挙という建前が制度化された
- 公認権と資金配分を握る党執行部の力が強まった
- 政権交代が2009年と2012年に現実に起きた
何が課題として残ったか
- 死票の増加。小選挙区では2位以下の票が議席に反映されない
- 一票の格差。区割りの見直しが人口移動に追いつかず、最高裁が違憲状態と判断する事態が繰り返された
- 比例復活に対する「落選したのに議席を得るのは分かりにくい」という批判
一票の格差については、2016年にアダムズ方式の導入が決まり、2022年の区割り改定(いわゆる10増10減)で初めて適用された。人口比に応じて都道府県への定数配分を自動的に見直す仕組みである。
制度は結果を作る
同じ得票分布でも、制度が違えば議席は変わる。中選挙区制のもとでの得票率と、小選挙区制のもとでの得票率を、そのまま比較することはできない。
過去の選挙結果を振り返るときは、その選挙が行われた制度を必ず併せて確認したい。選挙インサイトが選挙ごとに制度と定数を記録しているのは、この比較を誤らせないためである。
出典
- 総務省「選挙制度の変遷」 https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/
- 衆議院議員選挙区画定審議会設置法(e-Gov 法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/406AC0000000003